羊蹄山ようていざんの伝説

天地創造の時代、暗い海原うなばらには、どろどろとした物体が、うごめいていた。
その中から陽炎かげろうのように立ち昇っていくが、空となり、残ったどろどろとした物が、り固まり堅くなって一つの岩となった。
その岩も次第に大きくなり、海の上に突き出て岩山となった。

その岩山の上に一人の国造りの神が現れ、しばらくすると今度は天空の雲の中から、五色ごしきの雲に乗って美しい清らかな女神めがみが現れ、岩山の国造りの神のそばに降り立たれた。
二人の神様は、この五色の雲のうち、黒い雲を海へ投げ入れいわを造り、黄色の雲でその巌の間をうめて、土を造り、白い雲を海に投げ入れて魚貝ぎょかいにされた。
それから青い雲をもって、地上の草木くさきをつくり、赤い雲は地中に埋めて金銀きんぎん宝玉ほうぎょくにされたという。

こうして、国造りを終えた二人の神様は、この国土を誰にまかせるかを話し合っているとき、一羽のふくろうが飛んできて、大きな目で何かを二人の神に伝えた。
これを見た神様は、何事かをさとり、二人の神は夫婦となり、多くの子をつくられた。
そのうちの一人には、ペケレチュブという日の神を、もう一人には、クンネチュブという月の神になるように命じられた。
日の神は、後方こうほう羊蹄山ようていざん(雌岳めだけ)から、月の神は雄山おやまの羊蹄山から雲に乗って天空に昇り、暗い下界を日の神と月の神とが変わるがわる照らすようになり、下界は、やっと昼と夜とができ、それぞれの万物の営みが始まった。

これを見た国造りの二人の神は、安心して天に帰っていかれたということです。
国造りをされた神が初めて降り立たれたところが、今の羊蹄山(後方)のいただきであった。

更科源蔵 アイヌ伝説より

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