二風谷ダム 7 アイヌ民族を初めて先住民族として認めました

裁判ではアイヌ民族を先住民族とするかどうかの認否はこの裁判では不要であると主張しました。
(この時点では、日本の国はアイヌ民族を先住民族と認めていませんでした)

ダム自体は本体工事に着手していました。しかし建設省は萱野らアイヌ関係者の意見を容れて1996年(平成8年)にはダムに試験的に貯水を行って異常が無いか確認する試験湛水(たんすい)終了後、全ての貯水を放流するという異例の操作を行い、アイヌの伝統行事であるチプサンケを湖底で執り行うようにしました。

翌1997年(平成9年)に二風谷ダムの建設は完了。
二風谷地区は水没しましたが裁判は継続され、同年3月27日に二風谷ダム建設の是非について札幌地裁は判決を下します。

この中で札幌地裁は土地の権利取得裁決の取消しなどを求めた原告側の訴えをいずれも棄却しましたが、「工事のための土地取得などはアイヌ民族の文化保護などをなおざりにして収用を行ったことにより、土地収用法第20条3号の裁量権を逸脱している」として収用は違法である判断。

その上で既にされた収用裁決を取り消すことが「公の利益に著しい障害を生じる」として判決には違法を明記するものの、原告の請求を棄却しました。
(事情判決(行政事件訴訟法31条1項)また、アイヌ民族を国の機関としては初めて先住民族として認めました。基本的には原告敗訴であるが裁判費用は国と北海道収用委員会が負担することとなりました。