借りた物を返すときは

よその家へ、いきなりとびこんだ繁次郎。その長い通し庭のすみの方をゆびさして、「この土間のすみっこ、ちょっくら貸してくれ」

家人ふしぎそうな顔で、「ああいいとも。つかってくれ」
繁次郎、いきなり着物のすそをまくりあげ、しりをつきだして、わりわりとウンコをひりだした。

家人ぎょうてんして、「あれ。繁次郎、なんてことをするんだね、この人は」とさけぶと、繁次郎すまして、「借りた物をかえすときは、お礼になにか物をつけてかえさなくては、申しわけながべさ。おれは、なにもないから、せめてわずかだが、これ(ウンコ)をつけるさ、どうも、はあおおきに、おおきに」

故梁瀬アサ伝