久保栄文学碑ー札幌市平岸

札幌市豊平区平岸はかつてリンゴ村でした。
明治20年ごろから開拓使指導のもとで栽培がはじまり、最盛期には280町歩の一大産地となりました。海外にも販路を広げるほどでした。
りんごに関わりのある久保栄の文学碑が平岸の天神山に建てられています。

久保栄は明治33年に札幌市南2条西8丁目に生まれ、東大独文科卒後小山内薫の築地小劇場に入り、演出家、劇作家となりました。
平岸林檎園は若き日の久保にとってスケッチを楽しんだ場所でした。

文学碑は平成3年に建てられました。
戯曲「林檎園日記」で、没落農家を描いたドラマを直筆の原稿を拡大して刻まれています。

「6月6日(日曜日)晴。上田の畑からもとの新畑へかけて、今日ぐらいがもう満開で、うちのは平均して3分咲きほど。乳いろにうす紅をぼかした花が五輪づつかたまって咲く梢から、甘ずっぱい匂ひがして来て、そこらにいっぱいなるのを嗅ぐと、どういふわけか、子供の頃、百人堀にそって山の湖水の方へかよっていたガタ馬車の、あのピポ、ピポーと鳴らしてとほる笛の音が思ひ出されて、まだ丈夫だったお母さんが、いまわたしのしている帆前掛をかけて園内作業をしている姿が、眼にうかんで仕方がない」