滝本金蔵 2

幌別に着くと金蔵は、家族をつれて、登別川の奥地の温泉の湧き出るところに行きました。彼の目の前で、温泉が、白煙とともに凄まじい勢いで吹き上がっていました。金蔵は、温泉が佐多の身体に効くということを確信し、彼女に温泉に入るようにいいます。

佐多がおそるおそる温泉に入って、わずか数日。
佐多の身体はみるみる回復していきます。

痛みやかゆみは治まり、彼女は元気を取り戻していきました。彼はこの効き目を多くの人に知らしめようとします。そして、この温泉場所に小屋を建て、湯守になることを決心しました。

金蔵は、早速湯治場を建築し、そこでささやかな温泉経営を始めました。しかし、登別川の奥地は里から来るには、あまりにも遠くて不便でした。
しかも、熊などの獣害も心配され、客足はなかなか伸びません。そのため彼らの最初のお客は、近在のアイヌ民族の人々でした。
金銭を持たない彼らに対しても、金蔵夫婦はあたたかく迎えました。
次第に評判が評判を呼び、幕府の役人や硫黄山の労働者、さらに白老の仙台藩陣屋や南部藩出張陣屋の武士も訪れるようになっていきます。

そして、幕府にも金蔵たちの努力が認められ、それらの功績を認めて金蔵を永久湯守とする沙汰が下されます。  (つづく)