三浦清宏「北の話」ー室蘭市

三浦 清宏(みうら きよひろ)
1930年(昭和5年 )-   小説家、心霊研究者
室蘭市海岸町生まれ。東京大学文学部英文学科に進んだものの学生運動で休講続きの東大を嫌って21歳で中退し渡米、聴講を含めて3つの大学に通い、アメリカ・サンノゼ州立大学卒業後、アイオワ大学ポエトリー・ワークショップ修了。ヨーロッパを巡った後、1962年、31歳で帰国。
1967年から2001年まで、明治大学助教授、教授として英語を教える。
1970年、『群像』に小説「立て、座れ、めしを食え、寝ろ」を発表する。
1975年、「赤い帆」で第72回芥川賞候補。
1988年(昭和63年)、「長男の出家」で第98回芥川賞受賞。
2006年、「海洞」で第24回日本文芸大賞受賞

「幼年時代は、室蘭での思い出の方がずっと多い。室蘭での方が人間関係が多くこまやかだった。戦後アメリカに行ったりして20年近くも室蘭に帰らなかったが、帰国後はじめて行った時、夕空に再び(輪西の製鉄所)青いガスの炎を見て、時間がもとへ戻ったような不思議な気がした。次の駅では祖母が立っていそうだった」

「室蘭は長年日本を代表する鉄鋼の町として、また日本一の石炭の積出港として繁栄していたが、戦後急激に斜陽化した。長い間『鉄鋼や石炭』のイメージに塗られいたため、素晴らしい自然の景観が隠れていることを人々は知らない。
ぼく自身は、長い不在の後室蘭に戻った時、周囲の自然を見て、こんなに美しいところだったのかと思った。北海道でこれだけ変化に富んだ自然のパノラマを持っている都市は、他には無いと断言できる」