池澤夏樹「静かな大地」ー新ひだか町

池澤 夏樹(いけざわ なつき)作家。
1945年、帯広市生まれ。

小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、4-50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごし、今は札幌在住。

原條あき子と福永武彦の間に、疎開先の帯広で生まれ、1950年、両親が離婚し、1951年母に連れられて東京に移る。

夏の朝の成層圏(1984年)でデビュー。
スティル・ライフ(1987年)で第98回芥川賞を受賞。他多数受賞している。

『静かな大地』は(親鸞賞)

明治から大正にかけて、静内を舞台に。明治初期に淡路島から入植した和人を軸にして稲田騒動やバッタ襲来やシャクシャインの乱、日清戦争などの歴史のうねりの中でアイヌ民族と和人の生活・差別・文化が語られていきます。

「もともとは元静内が静内だった。シフチナイ、大きな祖母の川だった。こちらは染退、シベチャリ、鮭が卵を産むところだった。和人が地名を動かした。
わしらはシベチャリの者だった。ピパウの者だった。だから船を見たことはなかった。いろいろなことが入り組んでいる、と五郎は由良の顔をじっと見ていった。混じって、入違って、散らかっている。だから、ひとつのことを言うのにたくさんのことを説明しなければならない。ここはもともとアイヌが住んでいて、それから和人が来るようになって、それから和人がたくさん来て住み着いて、それでこのようになった土地だ。ものごとがどんどん変わった」