大江健三郎「青年の汚名」ー礼文島

映画カナリアの「麗端小学校岬分校」のセットがある公園

大江健三郎は東大の学生時代に「飼育」で芥川賞を受賞しました。
昭和34年1月、22歳の時にNHKラジオドラマの取材で礼文島に渡りました。

鰊に見放された漁師たちと風土病のエキノコックスを背景にした長編小説です。

 

「あの栄光の時代、あの豪華絢爛たる時代、鰊の億をこえる大群が島におしよせてきた時代、鰊の精液が島の周囲を輝く乳白色に染め、海面が前世紀の怪物の背のように盛り上がってひしめいた時代」

鰊の不漁と風土病にさいなまれる隔絶した北海の孤島を舞台に、過去の栄光と伝統にしがみつく長老と、現状打開に身を挺する若者たちとの対立葛藤を土俗的なイメージのなかで描いた小説です。

「役人が乗り込んできて、鰊はもう決して島の周辺には現れないと宣告する。一攫千金をめざす者らはやがて時代の流れにとりのこされ、難破し貧困になかに死をむかえることになる、ともいう。
 鶴屋老人は、遠洋漁業への転換と観光開発をすすめる役人と真っ向から対立した。島民たちを自分のもとに従属させて鰊を待っているが、しかし青年会は鶴屋老人を長老の座からおろすことで未来を開こうとする。」