ヒバリと天の神様

むかしむかし、ヒバリは天の神様のお使い役で、高い天の上にすんでいました。
ある日のこと、天の神様は人間の国へたよりを出すため、ヒバリにいいつけました。
「用がすんだら、すぐ帰ってくるのだ。忘れてはいけないよ」
「はい、わかりました」
と、ヒバリは出かけましたが、人間の世界についてみると、なんとも美しい。
あちらこちらに気をひかれて飛び回っているうちに、日が暮れてしまいました。

「用もすませたのだから、一晩だけとまっていこう」と、かってな理由をつけて地上にとまることにしました。
ヒバリが帰ってくるのを、今か今かと待っていた神様は、一日じゅう待ちぼうけをくって、かんかんです。

次の日、ヒバリは朝日がさっと照らし出す気持ちのよい朝をむかえました。
「もっと楽しみたいけれど、急いで帰ろう」と地上から飛びたちました。
勢いよく中の天あたりまで上がると、天の神様の姿が見え、天の神様もヒバリを見つけました。
「悪いやつめ、わたしの言いつけを守らぬものは、もう天に帰ることはない。きょうかぎり地上にすむがよい。おまえはこれから中の天より高く飛べないことにする」といいわしたのです。

それを聞いたヒバリはおもしろくありません。
「天の神様、それはあんまりです。あなたのつくった地上の世界があまり美しいので、見とれてしまって帰れなかったのです。たったそれだけのことで、そんなおしかりになるのはひどすぎます」と口答えをして、羽ばたきしました。
が、どうしたものか、そこからはどうしても高く上がれません。だんだんつかれると、すーっと地上に落ちてしまいます。
また元気を出して、
「神様ーっ、天に帰してくださーい」と、腹たてながら飛び上がり、そしては落ちを、くりかえすようになりました。
「ピーチク、ピーツク」
ヒバリのことをアイヌ語で「チャランケ・チカップ」(談判だんぱんする鳥)というのは、こんなわけがあるからです。

※ 談判=自分の要求を通すために相手と話し合うこと。