上湧別町(かみゆうべつ)は、網走管内中部の紋別郡に存在した町で、
2009年10月5日に湧別町と新設合併し、新たに湧別町として発足しました。
屯田兵の入植した地であり、現在も兵村という地名が町内に残っています。
屯田兵により拓かれた上湧別地区は、国防と開墾を担う屯田兵には面積4.4ヘクタールの土地が無償提供され農地とされていたのですが、決して広くない面積から北海道で農業経営するのは厳しい状況でした。
昭和32年、当時の農業改良普及所長・西川照憲氏が研究を重ねた末、「少ない面積の農家の収入を増やすには高収益であるアスパラガスとチューリップが有望」と呼びかけます。
同年春に町内の54戸の農家がチューリップ耕作組合を結成、オランダからチューリップの球根22種類6万500球を輸入し、「チューリップで夢を見よう!」を合い言葉に外貨獲得の大きな期待を担って栽培が開始されました。
昭和35年にはバンクーバー・シアトル・サンフランシスコに初輸出され、昭和35年には生産量(33万球)・輸出量共に全道一となり、昭和40年には22万球を輸出するようになりました。
軌道に乗りチューリップの栽培も順調に伸びていくものと思われた矢先、昭和41年にオランダの球根が世界市場で値下げされたため輸出が困難となりました。
チューリップ栽培の夢が消えかかったのですが、生産農家たちはチューリップを
畑の片隅や自宅の庭に植え続けました。そして「かつて町の農業に活気をもたらしたチューリップを後生に残そう」と昭和51年「町の花」に指定されることになりました。