大崎善生「将棋の子」ー札幌市

大崎 善生(おおさき よしお) 1957年(昭和32年)12月11日 –     
作家、元雑誌編集者、CS日本番組審議会。

札幌市出身。2000年、将棋棋士の村山聖の生涯を追ったノンフィクション小説『聖の青春』で作家デビュー。同作は第13回新潮学芸賞を受賞した。

「昭和44年の札幌は今からは想像もでくないほどの田舎町だった。舗装されていない道がほとんどで、高層ビルやマンションのような建物も見かけることはなかった。私は小学校6年生で、毎日路面電車に乗って藻岩山の麓に建つ木造の小学校に通っていた。
 小学校から歩いて20分ほどの藻岩山の中腹に建つ納骨堂の前で、ある朝散歩中の老人がヒグマに襲われて死んだということがあった。そこは冬はスキーをしに、春や夏にはおたまじゃくしや蝸牛などを採りに、私もよく出かける場所だった。」

「当時の札幌はきたるべき冬季オリンピックの準備に沸き立っていた。北の大地には地下鉄工事の槌音が鳴り響き、町のあらゆる場所でオリンピックのテーマソングである「虹と雪のバラード」が流れていた。

そのころ、おそらくはどこでもそうだろうが、私の通う小学校でも突然ふってわいたように将棋ブームが巻き起こった」