松本清張「屈折回路」ー夕張市
松本清張(1909年~1992年)の 「屈折回路」(文春文庫 1980年)は夕張が重要な位置を占めています。
「三井三池の騒然たる大争議のさなかに、突如炭住地区をおそったポリオ(小児麻痺)の流行、そして熊本県衛生試験所技師の従兄の死……。九州、北海道と細菌をばらまく謎の黒い手の正体を追う男に謀略機関の影がまつわる」
昭和35年、実際に北海道・九州の炭鉱地帯で大流行したポリオと、当時激化していた炭鉱争議を題材とした内容になっています。
「岩見沢から乗り換えて室蘭本線の途中、栗山という駅から三菱専用の軌道車に乗り換えた。ここまで来ると、今までの平野が尽きて山が迫っている。その山間を気動車が進むにつれて、自然の丘陵の間にボタ山が見えはじめた。札幌を発って三時間、午前中に(大)夕張の街に入っていた。町は山の袋小路といったところにあった。」
「丘陵の上には炭鉱特有の建物や竪穴の櫓や高い煙突が見え、街は雑然としていた。保健所にたどり着いたとき、山の上から昼休みのサイレンが咆えた。街全体が三菱炭鉱の就業システムに支配されているように見えた。」