バチェラー・八重子「若き同族に」ー伊達市有珠
バチェラー・八重子(ばちぇらーやえこ)
(1884―1962)
歌人、キリスト教伝道者。北海道有珠郡有珠(現、伊達市)のアイヌの名族、向井富蔵の二女。幼名はフチ。
7歳のとき、父と親交のあったイギリス人宣教師・バチェラーから受洗。1906年(明治39)にバチェラーの養女となり、1908年には養父とともに渡英、アイヌのことを講演し、強い反響があった。
宮本百合子(ゆりこ)の『風に乗ってくるコロポックル』の取材には、日高地方のアイヌの村に案内している。
違星北斗(いぼしほくと)、森竹竹市と並んでアイヌの三大歌人。
新村出、佐佐木信綱、金田一京助らの協力で出された歌集『若き同族(ウタリ)に』(1931)には約300首が収められている。
「ふみにじられ ふみひしかれし ウタリの名 誰しかこれを 取り返すべき
貧しくも コタンを愛して 働かむ 父母たすけ 兄を助けて
いにしえの ユーカラカムイ 育てにし 姉君今も 在らまほしけれ
考えて また考えて 見てみましょう ウタリの為を ウタリの前途を
キリストの 教の髄の その髄を ウタリに告ぐる 人は誰なる
有珠湾に まれに訪い来る 雁の群 足もぬらさで 去るぞ悲しき
有珠山に のぼりながむる 噴火湾 岸辺にたてる 駒が岳かな」