加藤幸子「地方文化の創造」ー置戸おけと

加藤 幸子(かとう ゆきこ) 
1936年 –   作家。

1936年札幌市生まれ。1941年に両親とともに北京へ渡り、1947年に引き揚げ船に乗り帰国。北海道大学農学部卒業。
農林省農業技術研究所に勤める傍ら「三田文学」に作品を発表。1982年「野餓鬼のいた村」で新潮新人賞を受賞、翌1983年「夢の壁」で第88回芥川賞を受賞した。

 

ふるさと銀河線(すでに廃線)に乗って置戸駅で途中下車して、紅葉に彩られたダムサイトで一泊し、次の日に図書館とクラフトセンターに行く。この町の人口約五千五百人。面積の八割が森林で冬の気候は本州とは比較にならない厳しさだ。

「過疎の町だから、人口減少の悩みもあるし、経済的に豊かとはいえない。それでもたしかにこの町には“本の文化”“木の文化”が存在している。そして何よりも、自然に恵まれたわが町で楽しく暮らそう、という志向が全住民にゆき渡っている。
それは“遊びの文化”も生み出す。500キロの丸太を馬ならぬ力自慢の男たちが引く『人間ばん馬』競技会の日には、町民総出で人馬券(?)片手に熱狂するらしい。
辺境の北の地にこんなあかるい“むら”を見出して、心うれしくなってしまった」