和田芳恵「大樹海に溺れて」ー上士幌町
和田 芳恵(わだ よしえ) 1906年 – 1977年 小説家、文芸評論家。
山越郡長万部町出身。中央大学法学部独法学科卒業。新潮社勤務のかたわら同人誌に小説を執筆。 樋口一葉研究を行い、第二次世界大戦中に『樋口一葉研究』を刊行。戦後は大地書房に勤務、小説雑誌『日本小説』を創刊(「中間小説」を創始したと評される)。
小説『塵の中』で1963年下半期の直木賞を受賞。1975年『接木の台』で読売文学賞、1977年『暗い流れ』で日本文学大賞、1978年「雪女」で川端康成文学賞受賞。また『筑摩書房の三十年』(非売品、1970年)を執筆担当。
「北海道は私が生まれたところなのに、道東は、ほとんど未踏の地だから、今度の旅は、いいようがないほどの感銘を受けた。開通前の国道273号(層雲峡へ抜ける糠平国道)を車で見られたのだから、北海道に住む多くの人たちよりも、未知の旅をしたことになろうか」
「三国峠の長いトンネルへはいる前の峠の上からの、この盆地をめぐる樹海の眺めは気が遠くなるほど素晴らしい。
また、秋には間があったから、緑一色の濃淡だけの原始林が、連峰に取りまかれて、ひっそりと静まりかえっていた。近くに、赤いナナカマドの実などが興趣をそえていたが、遠景は緑の樹海であった」
三国峠で描いた絵が二点あります。