噴火湾の大章魚おおたこ

内浦湾うちうらわん(噴火湾ふんかわん)はアドイイナウという大蛸おおだこがいて、その大きさは頭が大釣鐘おおつりがねほどもあり、足を広げると、四十メートルにもなった。

りょうに出る漁船はもとより、大阪、堺から蝦夷えぞまでやってくる商船あきないぶね弁財船べんざいせん

カムイシャチから(豊浦町) 油絵 F4号 横333×縦242 2020年11月作成

や、くじらまで一呑みにされ、漁師たちは漁に出るときは、いつも大鎌おおかまを持っていくほど恐れおののいておった。

大蛸がんでいる礼文華れぶんげのエコリ岬あたりの海は、いつもあかく染まっておったという。
アイヌ語で蛸のことをアドイイナウと呼ぶ。

                        更科源蔵(アイヌ伝説より)