太田神社拝殿から本殿のある太田山山頂を見上げると、不思議な世界に引き込まれます。
『むかしむかし、この蝦夷の地に敦賀から来た暴れ者がおりました。アイヌの人たちが和人に挑んだ戦いに、この男はひとり悪知恵をつかい勝利を収めます。それいらい、この男に文句をいう人はいなくなりました。この男が、アイヌ集落のある太田に上陸したときに、山の頂にある祠に太田大権現の尊号を賜ります。以来、この航海の安全と霊神の加護としてみんなは信仰するようになりました。この男の名は「たけだのぶひろ」、松前藩の祖となるひとでした』
太田神社は太田山(485m)の険しい山頂にあるため拝殿は岸壁にあります。すぐその横にある灯台は道内最古のもので「定燈籠」(じょうとうろう)といいます。青銅製でどの方向から見ても「太田」の文字になっており、夜にともる灯りはより童話の世界に似合います。
道南五大霊場の一つで、山門の入口には「まむしに注意」の看板が人を寄せ付けません。石段は45度あると思われる角度で斜面にへばりつき、とても手すりがなければ上る気にはなりません。ここを上ると北海道最古の山岳霊場、太田神社がありますが、途中から石段はなくなり、鉄の鎖にしがみ付きながらの登山コースとなります。下から見上げて合掌。
定山渓に温泉宿を設けた定山和尚もここで修行を積みました。松浦武四郎なども訪れているほか、阿部比羅夫の伝説も伝わる所です。紙芝居や童話を作るには話題に事欠きません。