エドウィン・ダン

1848年(嘉永元年)7月19日- 1931年(昭和6年)5月15日

明治期のお雇い外国人。
開拓使に雇用され、北海道における畜産業の発展に大きく貢献しました。
アメリカ合衆国オハイオ州チリコージー出身。

オハイオ州マイアミ州マイアミ大学卒業。1883年、勲五等双光旭日章を受章。息子のジェームス・ダン(壇治衛)は音楽家。長男の妻・ダン道子も音楽家。

マイアミ大学を卒業後、父の経営する牧場で牧畜全般の経験を積み、さらに叔父の牧場で競走馬と肉牛の育成法を学びました。
ホーレス・ケプロンと親交があった縁から、ホーレスの息子エー・シー・ケプロン(1871年より開拓使顧問)によって開拓使の技術指導者に推挙され、1873年(明治6年)に明治政府との間で1年間の雇用契約を結びます(結局、開拓使が廃止されるまで1年契約を繰り返すことになる)。
渡日の際、ダンは14台の貨車を用いて92頭の牛、100頭の羊、農耕具を日本へ輸送しました。
東京官園において、北海道へ移住した東北士族団の子弟および開拓使官吏約30人に農畜産の技術指導を行いました。その内容は欧米式の近代農法および獣医学であり、とくに獣医学に関する指導は西洋獣医学の知識を有する者が一人もいなかった当時の日本において貴重なものでした。

函館へ

明治8年、函館近郊の七重へ出張。
馬匹改良のため、馬の去勢技術を指導します。これは気性の悪い馬を去勢によって温和にし、同時に遺伝子を残さぬよう淘汰することは欧米においては一般的な手法でした。しかし、当時の日本においては士族を中心に「気性の悪い馬を乗りこなしてこその馬術」という意識が強く、ダンの指導はなかなか浸透しませんでした。
ところが、当時の日本における馬術の第一人者であった函館大経の理解を得ることに成功。馬の去勢は次第に受け入れられるようになりました。

七重においてダンは新冠牧場の経営改善策について報告書を提出し、種豚、種牡馬の輸入を要求。さらに中国からの羊の輸入頭数について意見を出します。
同年、ダンは日本人女性と国際結婚をしました。
この結婚により、ダンは日本に永く留まる決意をしたといわれています。

札幌へ赴任

エドウィン・ダン家族写真

明治9年、札幌へ移動。
ダンの提案により、札幌西部に牧羊場、真駒内に牧牛場(真駒内牧牛場、のちの真駒内種畜場)、漁村に牧馬場(漁牧場)を建設することが決定。
施設が完成した後、ダンは牧羊場においては羊の飼育のほか北海道の気候に適合する農作物の栽培実験を行い、漁牧場においては馬匹改良のため、洋種馬と日本在来種である南部馬との交配を試み、牧牛場においては100頭あまりの牛と80頭あまりの豚を飼育し、100ヘクタールの飼料畑を整備し、バター・チーズ・練乳の製造およびハム・ソ-セージの加工技術を指導しました。

同年、開拓使が北海道に競争場を建設することを計画。
それまで北海道では直線状の馬場や角形の馬場によって速歩競走が行われていたに過ぎませんでした。
ダンは北海道育種場に440間(約800m)の楕円形の馬場を建設し、襲歩による競走を行うべきだと提案。提案に基づいて建設された競馬場(北海道育種場競馬場)において西洋式の競馬が定期的に開かれるようになりました。

明治10年(1877年)、漁牧場の土壌が馬の飼育に適さないと判断したダンは、馬匹改良の本拠地を新冠牧場に移すべきであると判断。同牧場を拡張整備し、漁牧場から馬を移送します。
新冠牧場では千数百頭もの馬が飼育され、根岸競馬場におけるレースに優勝する競走馬や全国博覧会で一等賞をとる馬を生産するなど名実ともに北海道における馬産の拠点として発展しました。
なお、新冠牧場は明治16年(1883年)に宮内省所管の新冠御料牧場となります。

アメリカへ一時帰国、外交官として再来日

エドウィン・ダン記念館

明治15年(1882年)に開拓使が廃止されたことに伴い、ダンは新たに農商務省と雇用契約を結びますが同年12月に東京へ移動し、翌1883年2月に雇用契約を終了させました。
1883年、アメリカへ帰国。
しかしアメリカ政府によって北海道における業績を評価され、1884年、アメリカ公使館二等書記官として来日。
1889年に参事官、1890年に代理公使、1893年に公使に昇進した。
1894年に日清戦争が勃発した際には和平交渉実現のために奔走したといわれています。
晩年は公使を辞し、米国系石油会社(スタンダード社)の日本支配人となり、のちに三菱造船東京本社に勤務。1931年5月15日、東京の自宅で死去。

エドウィン・ダン記念館
現在、ダンの功績はエドウィン・ダン記念公園(旧真駒内中央公園、真駒内種畜産場跡)内のエドウィン・ダン記念館においてみることができます。