三毛別羆事件

1915年(大正4年)12月9日午前10時
~14日午前。

留萌管内の苫前村三毛別(現苫前町三渓)で起きたヒグマ事件は、クマが人を襲ったものとしては史上最悪の惨事でした。

わずか3日のうちに一頭のクマが開拓農家12軒を襲い、6人を殺害、3人に重傷を負わせたというのは熊害としては世界にも類をみません。

 

この悲惨な事件が起こった場所は、日本海に面する北海道北部の海岸から30Kmほど内陸に入った苫前郡苫前村の三毛別の六線沢という開拓部落で、現在は苫前町三渓という地名になっています。

事件が起こったのは大正4年12月。
まず9日午前10時頃、太田三郎宅に一頭のクマが侵入し、在宅していた妻とその子供の2人を殺害。
妻の遺体はクマによって山の中まで引きずられ、翌10日、部落の男たちによって変わり果てた姿で発見されました。
10日夜、太田宅で2人の通夜が行われます。
ところが午後8時半頃、その席に再びクマが侵入し、遺体を奪い返しに来たのです。

多くの人々が家の中にいたため大惨事になると思われたが、その時1人が銃を発砲し、クマは恐れて家を退散して山の中へ逃げていきました。
一方クマ狩りの本部が下流の一軒の家に置かれ、討伐隊員が集まります。

ところが11日も12日もクマの姿さえ発見できず、焦りにかられていました。

しかし、13日夕刻にはクマは誰もいない開拓部落の9軒もの家に侵入し、破壊の限りを尽くします。
同日午後8時頃クマはさらに下流に現れ、発砲したが逃げられてしまいました。

14日午前、足跡と血痕を発見し追跡したところ、クマを発見。
山本兵吉はクマに向かって発砲し見事に的中、クマをしとめました。

3日間にわたった討伐隊員の出勤は官民あわせて延べ600人、アイヌ犬10数頭にも及びました。

日本最大の野生動物事件ー三毛別羆事件

事件は、吉村昭の小説「羆 嵐(くまあらし)」で詳しく知ることができます。
 出版社=新潮社(文庫)初版=1982年11月25日。

「入植者たちを襲ったヒグマがハンターに撃ち殺されると、好天だった空が突然、神の怒りをかったかのように猛吹雪となった」

との言い伝えがあり、この話をもとに吉村は小説のタイトルを付けたといいます。

 

留萌・苫前町では、町おこしの一環として90年、「三毛別事件跡地」に、当時の開拓小屋がヒグマに襲われる様子を再現しました。今では、道内外の人が訪れる観光スポットとなりました。

「多くの人に事件の恐ろしさとともに、開拓時代の苦労があって今があるということを知ってもらいたかった」

明治以降、全国から北海道に向けて移住が進みましたが、当時の苦労と悲惨さがこの地においても知ることができます。
再現された場所に向う人たちのブログもたくさん公開されています。