本庄睦男「オホーツク作品集・北の開拓地」ー 紋別市上渚滑

本庄睦男の23歳の時に発表した処女作「北の開拓地」です。
本庄は「石狩川」でデビューしますが、そこにいたるまでの開拓の歴史がよくわかります。

これは、本庄一家がまだ当別に行く前の、紋別市上渚滑時代の処女作でした。

「小作奴隷に産みつけられた女と、五尺八寸の男の体格との、骨の油まで絞りつくした労働であったが、生まれた土は彼等の生存を拒絶した。内地から追い出されて、彼等の唯一の目的は、三年間の期限を切られて、此の谷峡の原始林を耕作地に征服することにあった。お役人の許可を得れば、五町歩一戸分が、自分の所有地になる。草の根を食い乍ら、二年を頑張った。土地の半分があかるくなった。残り二町歩の原始林を、少なくとも立木だけはどうしても伐り倒さねばならぬ。油断がならぬ。」