恵迪寮歌「都ぞ弥生」歌碑 ー札幌市

北海道大学のエルムの森(札幌市北17条西9丁目)に、日本三大寮歌に数えられている恵迪寮歌けいてきりょうか「都ぞ弥生」歌碑が建っています。

日本三大寮歌は、旧制一高『嗚呼玉杯に花うけて』、旧制三高(現・京大)『逍遥(しょうよう)之歌/ 紅萌ゆる丘の花』、北大予科『都ぞ弥生』です。

当時の恵迪寮は、北海道大学の前身となる東北帝国大学農科大学の予修科(予科)学生の寄宿舎でした。恵迪寮では1907年から寮歌が作られており、都ぞ弥生は第6回目の寮歌となります。

作曲者は当時予科3年生であった赤木顕次(1891年 – 1959年)。作詞者は同じく2年生であった横山芳介(1893年 – 1938年)。明治45年に作られました。

作詞横山芳介 作曲赤木顕次

都ぞ弥生の雲紫に
花の香漂う宴遊(うたげ)の莚(むしろ)
尽きせぬ奢(おごり)に濃き紅や
その春暮れては移ろう色の
夢こそ一時青き繁みに
燃えなん我胸想(おもい)を載せて
星影冴(さや)かに光れる北を
人の世の 清き国ぞとあこがれぬ

豊かに稔れる石狩の野に
(かりがね)はるばる沈みてゆけば
羊群(ようぐん)声なく牧舎に帰り
手稲の巓(いただき)黄昏(たそがれ)こめぬ
雄々しく聳ゆる楡(エルム)の梢(こずえ)
打振る野分に破壊(はえ)の葉音の
さやめく甍(いらか)に久遠(くおん)の光
おごそかに 北極星を仰ぐかな

寒月懸れる針葉樹林
(そり)の音(ね)凍りて物皆寒く
野もせに乱るる清白の雪
沈黙(しじま)の暁(あかつき)霏々(ひひ)として舞う
ああその朔風(さくふう)飄々として
(すさぶ)る吹雪の逆まくをみよ
ああその蒼空(そうくう)(こずえ)(つら)ねて
樹氷咲く 壮麗の地をここに見よ

牧場の若草陽炎(かげろう)燃えて
森には桂の新緑萌(きざ)
雲ゆく雲雀(ひばり)に延齢草(えんれいそう)
真白の花影さゆらぎて立つ
今こそ溢れぬ清和の光
小河の潯(ほとり)をさまよい行けば
美しからずや咲く水芭蕉
春の日の この北の国幸多し

朝雲流れて金色(こんじき)に照り
平原果てなき東(ひんがし)の際(きわ)
連なる山脈(やまなみ)玲瓏(れいろう)として
今しも輝く紫紺の雪に
自然の芸術(たくみ)を懐(なつかし)みつつ
高鳴る血潮の迸(ほとばし)りもて
貴き野心の訓え培い
栄え行く 我等が寮を誇らずや