北帰行殺人事件ー留萌市

西村京太郎の長編推理小説。1981年に光文社から刊行されました。
「十津川警部の部下・橋本豊刑事が辞職を申し出るところから物語は始まり、翌日、十津川は橋本を見送るため、亀井刑事とともに羽田空港に向かうが、なぜか橋本は現れない。十津川の部下が上野駅で橋本らしき人物を目撃した。話によると、橋本は青森行きの夜行列車「ゆうづる13号」に乗ろうとしていたらしい」

昭和50年代の留萌の情景を描写しています。

「留萌本線は、もともと、北海道の中央部で産出する石炭を、日本海側の留萌港まで運ぶために作られた鉄道である。今でも、ディーゼル機関車に牽かれた貨車が原炭を積んで走っている。二人が、深川駅のホームに入って行ったときも、石炭を積んだ貨車12、13両を牽引して、赤いディーゼル機関車が、ゆっくりと、通過して行った。
そのあとに、留萌行の普通列車が、入って来た。列車は、ごとごと、留萌に向かって、走り続ける。車窓の外には、水田が広がっている。開拓者たちが、努力して、北の原野に作り上げた水田である。」

「留萌本線は、この留萌が終点ではなく、日本海沿いに増毛まで伸びている。ホームに降りると、線路は、まだ、続いていた。面白い駅で、構内の中央を、貨物の線路が占め、石炭車や、タンク車などが、並んでいる。
十津川たちの降りたホームは、そのため、脇のほうにどけられ、留萌から別れて、幌延に向かう羽幌線のホームは、扇型の反対側の位置に離れて作られている。(中略)留萌も、もとは、漁港だった。」