長田幹彦「澪」ー森町

長田幹彦(ながた みきひこ)
1887年(明治20年) – 1964年(昭和39年)
小説家、作詞家。
東京・麹町生まれ。兄秀雄の影響で新詩社に入るが、脱退して『スバル』に参加して文筆活動を開始。
早稲田大学在学中、北海道を放浪、そのときの旅役者生活に取材した『澪(みお)』(1911~12)、『零落(れいらく)』(1912)で一躍新進作家として文壇の花形となる。

 

「室蘭・森がよいの振洋丸は150トンばかりの小蒸気船で、二人は午前三時に室蘭を出帆した。海はシケていた。予定より一時間ほど遅れて朝の九時過ぎに船はようやく森の町が見えるところまで辿り着く。間も無く巡査を乗せた船がやってきた。お勝の親の手が廻っていたのだ」

「桟橋に着くと、彼らはその儘すぐ巡査に導かれて停車場の構内を通り抜けて町の方へ出た」