辻真先「ローカル線に紅い血が散る」ー美深町

(つじ まさき)     1932年 – 90歳
名古屋市出身。

1954年、NHKに入局。制作進行、演出、プロデューサーなどを務めた。NHK在局中も脚本の執筆を行っていたが、1962年に退局し、脚本家としてアニメ・特撮などを中心に多くの脚本を担当。
アニメ・特撮脚本家、推理作家、漫画原作者、旅行評論家、エッセイスト、
デジタルハリウッド大学名誉教授

 


「美幸線は延長21・5キロ。本来なら遠くオホーツクに面した北見枝幸の港まてで延びる計画で、すでに区間路盤工事も終了しており、途中の歌登町には搬入ずみのレール、枕木が山をなしている。

枝幸と結んで美幸線というわけだ。美深から三つ目の終点仁宇布駅のホームに立つと、はるかに東へ路盤がつづいていた。仁宇布の集落は40戸ばかりで、人口が200人にみたないとあっては、どうあがいても赤字線だ。学生以外は、たいてい車を使う。
オホーツクにつづいているであろう路盤の行手を見定めたくて、シンと真由子は、小手をかざした。まだ敷かれていないレールの上を、汽笛を鳴らしてディーゼルカーが幕進してくるような錯覚にとらわれた。それは沿線住民の、見果てぬまぼろしの列車であった」

昭和56年に美深町は福岡県添田町と姉妹提携をしました。大赤字線をかかえる自治体の奮戦はどこも同じで、添田町は赤字日本一を逆手にとって松山湿原をPRしたり、東京の数寄屋橋で入場券を売るという奇策の姉妹提携でした。