寺田寅彦「札幌まで」ー後志地区

かつては札幌から函館に向かう列車は「函館本線」が主流でした。函館本線は小樽を出ると余市~倶知安~ニセコ~と後志地方を縦断して大平洋の長万部駅に到着します。山岳地帯を通るため速度が出ないのでのんびりした旅でした。

残念なことですが、また鉄路が消えることになりました。
小樽から長万部間が廃線になることが決定しました。千歳線→室蘭本線と太平洋を廻る鉄路ができてから、山岳を通る函館本線は時間がかかるため押され気味でした。

昭和7年に物理学者であり随筆家としても名高い寺田寅彦が、北大での講義のため来道した時に函館から本線に乗り後志を通った紀行記があります。

「長万部から噴火湾の海岸を離れて内地に這入る。
人間の少ないのに驚く。ちゃんとした道路があるが通って居る人影が見えない。畑に働いている人もめったには見つからない。勿論、熊にも逢わなかった。

後方羊蹄山は綺麗な雪帽を冠って居た。十分後には帽が三重のスカート雲の笠になって居た」