森田たま「待つ(さい果ての酪農基地)ー別海町

森田 たま(もりた たま) 1894年 – 1970年 小説家・随筆家。
元参議院議員(1期)。

「明治27年(一八九四)12月19日に南一条東四丁目のこの地で生まれた(土屋邸奥の土蔵は遺構)。庁立札幌高等女学校を中退して44年に上京し、大正2年に小説家として出発する。北海道出身女流作家の第一号。昭和11年「もめん随筆」で随筆家の地歩を築き、“現代の清少納言”と称された。
故郷の風物を描いた作品が多い。女性らしい感覚で詩情をたたえて描いているが、青春自画像を刻んだ「石狩少女」は得難い小説である。
昭和45年(一九七〇)10月31日、満75歳のとき東京で没した。」

1962年 – 第6回参議院議員通常選挙の全国区に自由民主党公認で立候補し初当選。国語問題小委員会委員長。(任期満了により政界を引退)

長女はデザイナーの森田麗子、息子に映画プロデューサー森田信。

旧奥行臼駅逓所

森田たまが別海町を訪れたのは根釧パイロットファームが発足した昭和33年でした。随筆集「待つ」に「さい果ての酪農基地」として収められています。

「札幌を夜の汽車でたつて、朝の七時に釧路へ着き、あと二時間半で根室という厚床駅で、ガソリンカーに乗りかえ、パイロット・ファームのある春別駅へ着いたのは、ちょうどおひるであった。札幌から急行で十五時間かかる。
小雨がパラついて、つめたい風が吹いていた。
出迎えのジープに乗って、いかにも新開地らしい駅らしい駅のささやかな町をとおり、しばらく行くと廣野の中にモダンな建物の散在する一郭が見えてきた。パイロット・ファームの事務所、独身役員の合宿舎、機械の修繕をする大きな建物、そこには幾台ものブルドーザやジープなどが入院している。
いずれも去年かおととし建ったばかりで、小学一年生のような、手垢のつかない新鮮さと、一種のはにかみをたたえてならんでいる。」

鉄路の旅56 (中春別線)

鉄路の旅67(根室線)