上西 晴治「ノッカマップ岬」ー根室市

上西 晴治(うえにし はるじ)
1922年 – 2009年  享年84歳  小説家。
十勝郡浦幌町生まれ。

大東文化大学文政学部日本文学科に3年次編入し、1953年に卒業。卒論では有島武郎を選び、岩内町の木田金次郎を訪問する。八木義徳の『漁夫画家』を読んで自らも小説を書き始める。
北海道札幌工業高等学校の国語教師をしながら、創作活動を行い、1964年「玉風の吹く頃」で読売新聞短編小説賞受賞。1977年「オコシップの遺品」で芥川賞候補、「ニシパの歌」で直木賞候補、1980年『コシャマインの末裔』で北海道新聞文学賞受賞、1993年『十勝平野』で伊藤整文学賞受賞。アイヌ民族をテーマにした作品が多くあります。

「ノッカマップ岬」はエッセイで昭和50年の作品です。

「ノッカマップは根室半島の北海岸にある。ここは今から180年ほど前、『寛政国後・蝦夷の乱』の折、アイヌの人たちが惨殺されたところで、以前からいちどこの地を訪ねてみたいと思っていた」。
その「ノッカマップは小さな二つの岬にかこまれたところだった。入り江の中央に細い川が流れ落ち、その上流両翼に丘陵がつづいている。入り江は夕凪ぎのように静かだった。
『寛政国後・蝦夷の乱』の記録によると、国後、目梨のアイヌ三百数十人と松前藩遠征隊二百六十余人の大部隊が、このノッカマップに集結して騒乱処理がおこなわれたという。
斬刑三十数人が刑の不当を怒って獄舎を破り運上屋に殺到するところを鉄砲、刀槍で惨殺されたのだが、その凄惨さはいまなお人々の語りぐさとなっている。
記録でははっきりしないが、運上屋はノッカマップ川の川縁に建てられ、斬首の仕置場はこの岬の丘だったような気がする。
百八十年前といえばそう古い話ではなく、突端にある半円形のチャシ跡を見ていると、なんだか血腥いにおいがしてくる。」

北海道の岬めぐり27 ノツカマップ岬