三島由紀夫「夏子の冒険」ー函館市

三島由紀夫の7作目の長編小説。
破天荒なお嬢様・夏子が北海道に向い、仇討ちの青年と一緒に熊退治に出かける恋と冒険の物語。夏子に振り回される人たちの慌てぶりを交え、コミカルなタッチで描かれた娯楽的な作品。

1951年(昭和26年)、週刊誌『週刊朝日』8月5日号から11月25日号に連載。
1953年(昭和28年)1月14日には、角梨枝子主演で映画も封切られた。

 

「二人は頂上よりもやや低い見晴らし台で汗を拭いた」
「そこから左右を海に蝕まれたほそながい函館市街が一望の下に見渡され、市の中央をつらぬく緑地帯や、教会や、その花の咲いている庭や、水源地や、市民球場が、くっきり見えた」
「町のむこうは、ずーっと凸凹の地平線です。あれが横津連峰で、北から西へ走っています。北の端にぼんやり白い煙を上げているのが、駒ヶ岳です。西の端の海へ永くのびている先端が恵山岬です。岬のずっと手前に、あなたの泊まっている湯の川の町が見えますよ」
「海抜三百五十メートルの頂上の眺めは、さながらパノラマだった」

行動的でわがままな20歳の松浦夏子は函館の修道院に入るため東京を発ってきたが、連絡船上で熊狩りに向かう青年井田毅と知り合い、函館山に登る。その情景を書いたものです。