井上ひさし「四千万歩の男」ー函館市

小説家・劇作家の井上ひさしの長編歴史小説。
伊能忠敬を主人公としています。

2001年NHKの正月時代劇で『四千万歩の男・伊能忠敬』としてドラマ化されました。
出演
:橋爪功、高島礼子など。

 

 

函館の観光名所「函館山」の展望台の横壁に「伊能忠敬北海道最初の測量地」碑があります。

「五月二十八日 新暦七月十九日 土用 朝五つ迄曇る、それより晴天、江戸出立後の上天気なり、併し山々白雲おほし、箱館山に登て所々の方位を測、夜も晴、測量・・・・・寛政十二年 一八OO年 伊能忠敬測量日誌より 
                         昭和32年4月 函館市」

「伊能忠敬一行が蝦夷地に上陸したのは松前領吉岡で、しかし西北の風が強かったため、目的地の箱館にはすぐに入れなかったのである。56歳だった。
5月22日、ようやく箱館に着く。『宿は地蔵町の伊藤屋幸治郎方である。草履の紐もほどく暇も惜しんで、蝦夷掛役所へかけつけ、対応に出た普請役の小林新五郎という役人に次の届を提出した。』いよいよ蝦夷地測量の第一歩であるが、箱館や蝦夷地の模様も描出している。」

「行く行くはこの男(高田屋嘉兵衛)が箱館を、いやいや、箱館一港じゃ小さいな、そう、全蝦夷を制覇するかもしれない」
「この近藤重蔵という旗本も血気さかんな強者でな、その前の年寛政九年十一月に赤蝦夷どもがエトロフ島のカムイワッカナイに立てた十字架を押し倒し、そこへかわりに『寛政十年戌午年七月 大日本恵登呂符 近藤重蔵』と記した標識を立てて帰ってきたそうですな』」

「最上徳内がいま蝦夷地道造掛元締として箱館の蝦夷掛役所にいることは忠敬も知っていたが、しかし、その最上徳内が自分のために嘆願をしてくれるとは思いもかけなかった・むろん、これまで忠敬は最上徳内と会ったこともない」

蝦夷地へ来てからは妙なことばかり起こると忠敬は思う。

 

北の美術館 観光客が行かない福島町の旅 2021年7月 通算89号