小林多喜二「転形期の人々」ー小樽市

小林 多喜二(こばやし たきじ)
1903年(明治36年) – 1933年(昭和8年)2月20日)
日本のプロレタリア文学の代表的な小説家、共産主義者、社会主義者、政治運動家。日本プロレタリア作家同盟書記長。日本共産党党員。

1933年2月20日、多喜二は日本共産青年同盟中央委員会に潜入していた特別高等警察のスパイ三船留吉からの提案により、赤坂の連絡場所で三船と落ち合う予定で、共産青年同盟の詩人今村恒夫とともに訪れた。その待ち合わせ場所には、三船からの連絡により張り込んでいた特高警察が待機していた。多喜二はそこから逃走を図ったが逮捕された。

小林多喜二は秋田で生まれましたが、すぐに小樽に移住したため短い生涯のうち23年間を小樽で暮らしていました。
「転形期の人々」は自伝的長編で「ナップ」に連載したものですが、未完に終わっています。小樽が舞台で幼少期から下積みを生き生きと描いた小説です。

「小樽の街はその山腹の起伏に沿って、海際を横に長く、長く延びている。そして港を抱きこんでいる両方の岬の突端まで延び切ると、今度は山を切り崩し、谷間を這い上がり、街の屋並が一段々々と階段形に上へ延びて行った」

「汽船が入ってくると、階段形になって、緑の木立と処々に赤い断層をもったこの港街は美しかった。
一番下の税関や倉庫や運河や大きな汽船会社のある海岸通り、その一つ上の銀行や会社や大商店のあるビルジング街、その又上のカフェー、喫茶店、夜店のあるまばゆい遊歩街、更にその上に公園や学校やグラウンドのあるこんもりとした緑の場所があって、山の手の住宅地に続いていた。」