海に生くる人々ー室蘭市

プロレタリア作家・葉山嘉樹の文学碑が入江臨海公園に建っています。
小林多喜二が感動し「蟹工船」を書くキッカケとなった名作「海に生くる人々」の顕彰碑であるとともに室蘭港には欠かすことができない証言の碑でもあります。

明治5年、開拓使はケプロンの提案を受け入れて函館から陸路を通り、森村から内浦湾を横切って室蘭に渡り、北海道の首都札幌に入る札幌本道が開削されました。
これにともない室蘭はそれまでの狭い崎守から対岸の絵鞆半島に移動して新室蘭がスタートします。

かつての室蘭は、文字どおりの石炭港でした。港の象徴として高架桟橋が港内に突き出し過酷な石炭労働の中で延べ80余人の沖仲仕が亡くなりました。
冬の石炭積み込み作業を通じて、ここに働く沖仲仕たちの労苦に鋭いメスを入れた作品が「海に生きる人々」です。

「桟橋からは予想以上に石炭をはき出した。それは黒い大雪崩となって船艙へ文字通りなだれこんだ。仲仕はそのナダレの下で落ちてくる石炭を隅の方へとシャベルでかきよせた。上の漏斗からの出方が速くて量の多い時は、数数人の人夫のシャベルの力が間に合わないので、船のハッチは石炭でふさがってしまい、人足たちは船艙の四隅の空いたところへ密閉されてしまった」

石炭積みの情景を書いたものですが、船は北海道炭礦汽船会社の万字丸(小説では万寿丸)でした。