開墾進歩の状況

初年移住者は移住季節遅れ、また樹木多くして開墾困難なりしも郷里にありて林業に従事しいずれも伐木に巧みなりして鬱蒼たる樹林もたちまちにして切り開き、また農耕には比較的経験を有せさるも常に劇働に従事せしものなるを以て苦労を嫌はず勤勉し先ず播種期を急ぐ稲、黍、馬鈴薯、菜、豆等を各戸5反歩ないし1町歩を作付し後蕎麦などの播種地を順次開墾し秋期までには1戸平均1町4反歩を作付せり。

この年は播種期遅れ耕種方法も粗雑なりしにもかかわらず作物の生育良好にして馬鈴薯は1反歩につき20~80俵、黍は1~3石、雑穀12石の収穫あり多きものは裕に1カ年間少なきものも数カ月を支ふるに足る食糧を得たり。

冬季は専ら伐木して開墾の準備をなしマッチ軸木、銃台用材等の伐採に従事して賃金を得たるものもあり越えて38年に入りては益々勤勉事業に従事し新移住者も前年の経験を聞きて作業せしが故にその耕種方法も稚拙ならず相協力して主に食糧作付を播種したりまた耕作の農具は初年は主に唐鋤をもちいし多数の中に草原地にして樹木少なき処には馬力機械を用いて新墾しあるいは馬匹機器を購入せるものありあるいは1反歩につき1円をもって雇耕せるもの等ありて開墾大いに進歩し前年移住者の内には配当地の全部を墾了せるものあり。

この年の総作付面積は298町歩に上がり、各作物の生育良好にして充分1カ年の食糧を秋収穫し前年移住者は総計500石の雑穀を売却して各自相当の収入あり。