郷里における状態

郷里吉野郡は有名なる山岳地にしてその面積狭きにあらざるも森林8分に対し耕地2分の割合にして農耕地としてはその生産力少なく一部の経済は主に林業に頼り耕地は畑7分田3分の割合にして田は稲と麦の二毛作畑は麦豆等を主作とするが平地に乏しく田畑とも非常なる階段傾斜をなし肥培の労実に多大なり。

故に男子は森林の労働に従事せし者多く又仲買商を兼ねたるのもありて農耕のことは副業なるの感あり。
移住の際田畑および家屋を売却して資本に充て多きは数百円少なきは数十円を携帯せり。