スズメとキツツキ

むかしむかし、けものや鳥がこの世にきたころ、みんな同じお母さん神をもっていたのですよ。
ある日のこと、鳥の女たちが集まって、顔にいれずみをしたり、お化粧をしたりしながら、おしゃべりをしていました。スズメもその仲間でした。ちょうど、スズメが口ばしのまわりにいれずみを始めたとき、神様のお使いがやってきました。

「たいへんな知らせだよ。おまえたちのお母さんが病気で、亡くなりそうだ。死ぬ前にもう一度、娘たちに会いたいと、しきりに言っているよ」
と言ったので、おおぜいの小鳥たちはびっくりして、われ先にと飛び出していきました。スズメは、お化粧しかけの顔では、と思いましたが、
「いやいや、お化粧はいつでもできる。みっともなくてもいいから、お母さんの死にめにお会いしましょう」と、急いで飛び立ちました。

そのとき慌てて、いれずみの黒水を頭にかぶってしまいました。
今にも死にそうなお母さんはスズメの姿を見て、
「おまえはほんとうに親孝行だね。これから先は、いつまでも美味しい穀物ばかり食べられて、幸せになるようにしてあげよう」と言って死んでいきました。

それからというものは、スズメは、口ばしが食べよごしたようになり、体じゅうにきたない水をぶっかけたような姿になりましたが、お母さんの言葉どおり、いつも穀物ばかり食べるようになったのです。

ところで、このとき、おしゃれ好きなキツツキは、
「お母さんが死んだってかまいやしないわ。私がだれよりも美しくなるほうがいいわ」と、お化粧を念入りにしてから出かけましたので、お母さんの死にめに会えませんでした。
これを見た神様は、
「おまえはほんとうに心がけのよくない不孝者で。きょうからは腐った木を突っついて、虫けらばかり食べているがいい」
と言って、ばつを与えました。

それで、キツツキは今でもコツコツと木を突っついて、虫を食べているのです。