摩周湖ましゅうこ中島なかじま

摩周湖の中ほどに小さなカムイシュツ(神婆かみのばば)という島があります。
この神様のような老婆は、アイヌの英雄えいゆう(酋長しゅうちょう)の母であったが、強い酋長も武運つたなく戦いに破れ死んだ。
その時、老婆は孫の一人息子を抱いて闇にまぎれ敵の手からのがれたが、山野を逃げ惑ううちに自分の命よりも大事な孫を見失ってしまった。

悲しみながら愛する孫の行方をいく日も探して、む屈斜路湖くっしゃろこまでたどりつき、疲れ果てた老母は、一夜の宿を湖の神に願ったが、なぜか湖の神は許してくれなかった。仕方なく、更に歩き続け摩周湖の畔りへたどりつき、カムイヌプリ(摩周湖の神)に頼んだところ、こころよく許してくれた。
老母は湖の中ほどで休んだが失意と疲労で歩くことができず、そのまま可愛い孫を待ち続けるうちに、島になってしまったという。

それから今でも、この島を訪れる人があると、孫が来たのかと思い、嬉し泣きに泣くので摩周湖には、よく雨が降るといいます。

更科源蔵 アイヌ伝説より