十勝のコロポックル

むかし、この地方にコロポックル(ふきの下の人)という小人族こびとぞくが住んでおった。
このコロポックルは大変おとなしいお人好しであった。けものや魚を捕っても自分達だけで食べずに、部落の家々にそっと置いていってくれた。

だが、誰も見た者はいなかった。

あしょろ銀河ホール21

ある日、いつものように、そっと肉や魚を戸口から入れてくれたのを、悪いアイヌの男が、手を引っ張って家の中へ引き込むと、コロポックルは、唇や手の甲に美しい入墨いれずみがしてあった。

無礼な仕打ちに怒ったコロポックルは、「いつまでもこの地に住もうと思っていたが、他の地に移ることにした。しかし、この地は段々とれるようにおとえてしまうから、トカブチと言え」といって、どこかえ消えるようにいなくなった。

それからこの土地をトカブチと呼ぶようになった。

更科源蔵 アイヌ伝説より