サケをかつぐクマ

ある日、おじいさんは、町へ米を買いに行きました。その帰り道です。
米を背中にしょって、藤古川(伏古川)のそばまで来て、
「あとすこしで、うちが見えてくるな」と、ひと休みしました。

そのときです。藤古川のむこう岸でガサガサと音がしたのです。はっと息をこらして、よく見ると、大きなクマではありませんか。しかも、藤古川からサケをとって、今もどっていくところなのです。
おじいさんは、がたがたふるえながら、じって見ていました。クマは、クマザサに、大きなサケを一匹つっさして、かた手で背中にかつぎ、むこう岸の土手にはい上がっていくのです。

クマはおじいさんに気が付かなかったのか、やがて、土手のむこうに行ってしまいました。おじいさんはクマが見えなくなるのを待って、命からがらにげ帰ってきました。
そして、「クマがサケをササでかつぐというのは、うそじゃと思っていたが、ありゃあ、ほんとうじゃ」と、いつまでも話しておりました。

伏古川物語より
伏古は札幌市にある地名です。