おどる大グマ
ずいぶんむかしの話。
丘の上で、子どもたちが何人も集まって、遊んでいた。
と、そこに大グマが一頭、のっそりと現れた。
子どもたちは、
「クマだ!」といって、いちもくさんに逃げだした。
逃げながら、子どもの一人が、そこに脱ぎ捨ててあったげたを、追ってくるクマをめめがけて投げつけた。うまく命中したかどうかはわからない。
しかし、子どもたちは、あっちへ、こっちへと、うまく逃げのびて行った。
「子どもたちがクマに襲われた!」
この知らせを聞いて、ふもとの大人たちが、何人も何人も、鉄砲をかかえて、丘をめざしてあがってきた。
と、驚いたことに、丘の上では、大きなクマが一頭、立ち上がったまま、両手をふりふり、踊り狂っているではないか。
「クマのおどりか?」と、大人たちは、しばらく息をのんで見ていた。
が、ゆがて、ズドーンと一発、そのクマを射止めてしまった。
近づいてよく見ると、なんと、その大グマの口の中には、ゲタが一つ、がっちりとはまりこんでいた。
大グマは、前足でそれを取ろうと、夢中になって荒れ狂っていたのだろう。