電燈のつきはじめたころ
わたしが電燈というものをはじめてみたのは札幌でしたが、田舎から出てきた者にとっては、その明るさと便利さは、きものつぶれる思いでした。
そのころ、会議のため札幌に出てきて、宿に泊まりましたが、つれの友だちが、さっそく、たばこに火をつけるため、キセルを電球にこすりつけて、火のつかないのをふしぎがりましたし、わたしも『電燈の消えるようす』が見たくって、暗いうちから起きだして、朝の電燈の消えるのを、いっしょうけんめいに、待ったものでした。
※ キセル=きざみ煙草をつめて火をつけて吸う道具