釧路くしろアイヌの始祖しそ

昔、釧路湿原には誰も住んでいなかったころ、阿寒岳あかんだけは自分の妹と、海のしゃちの妹とを取り換えた。雄阿寒岳おあかんだけには鯱の妹が嫁ぎ、鯱のところには雄阿寒岳の妹が嫁いだ。
雄阿寒岳に嫁いだ鯱の妹に子供が生まれた。

ある日、子守こもりの男の子に背負わして山に登っていく途中、鯱の妹の着物のすそが大きく風にあおられて妹の肌が、あらわに見えてしまった。

それを見た子守がニヤリと笑った。

御供山(釧路)

それを見た鯱の妹は怒り、子守を突き飛ばした。子守は子供を背負ったまま、阿寒川に落ちたが幸いに流木りゅうぼくにつかまり流れていった。

これを御供山おそないやまにいた姉妹が見つけ助けに走った。走りながらいった。
流木を先に押さえた方が大きい子を、遅れた方が小さい子を育てることにし、助けあげた。

姉妹は、それぞれの子を御供山に連れて帰り育て、やがて成人してから二組の夫婦になった。

これが、釧路アイヌの先祖せんぞになったという。

更科源蔵 アイヌ伝説より