江差の繁次郎

江差線のJR江差駅は終着駅でした。ところが2014年(平成26年)5月12日に江差線は廃線となり廃駅となりました。
上の江差駅は現役の時に写しました。江差の三大祭りがあるたびに、町を出た多くの江差人が降り立った駅です。

今は車社会となり、祭りのたびに国道227号で帰ってくるのでしょう。

札幌方面から国道227号で江差町に入ると、海に沿って道の駅があります。

笑え 笑へば ええごとある」笑いの守り神に出会う駅です。

“江差の五月は江戸にもない”といわれたころに、実在していたと伝えられる繁次郎という男がおりました。生まれは厚沢部村で福田といい、五尺に足りぬ小男で、頭と目玉と鼻が大きく、40過ぎまで母と二人暮らしでした。
酒よし、ボタモチ結構の大食漢、しかも女には目がない、これだけでも笑い話のタネになる資格はありました。仕事は身が入らず、頓智頓才をきかしたヘラズ口ばかり叩いて、みなに笑いを振りまいていたといいます。
「繁次郎の頓智話」の冊子も出ており、落語のネタや諸国の頓智話と共通するものも少なくありません。江差でなければ筋道の合わない話も残されています。明治のはじめに60歳くらいで死んだということです。

江差町の伝統

渡島半島の日本海側に3つの町があります。最南端が松前町、上ノ国町、江差町と続きます。北海道に住んでいる人でも函館に観光に行くことがあっても、この3つの町まで出かける人は珍しいでしょう。今は鉄道もありませんので、函館から車で松前まで2時間。更に江差まで上ノ国を経由で1時間。しかし、北海道のはじまりはこの3町でした。

江差町の町史  
文治5年(1189)  藤原泰衝の一族が江差に上陸(渡り党)。
文安4年(1447)  姥神社創設、正保元年(1644)現在地に移転。
宝暦4年(1754)  江差戸数600余戸、問屋13-14軒あり、姥神神
          社祭典に御神輿および山車人形できる。
文政元年(1818)  江差2000戸、福山(松前)3000戸、箱館1000戸

天保11年(1840) 1万両以上の豪商 福山(松前)6人、江差7人、箱館なし   

江差は900年に及ぶ歴史があり、有形無形の歴史遺産がいたるところに残されています。18世紀中ごろからのニシン漁最盛期には、多くの回船問屋や土蔵が軒を連ねています。

姥神(うばがみ)大神宮

鎌倉時代の創建と伝えられ北海道最古の神社です。江差の町は、今もこの姥神神宮で一年が回っています。

津花の浜に「折居(おりゐ)様」と呼ばれる老姥が庵を結んでいた。彼女には予知能力があり、天気や病気の流行を予言しては周囲に伝えるので、村の衆から何かと大事にされていた。ある年の春先、折居は神島から光が発せられているのを見て驚き、光の源を訪ねて島に渡った。島には老翁がおり、「この中の水を海に撒くと、ニシンという魚が群れになってやって来る」と、彼女に瓶子を授けた。
その瓶子を持ち帰り、中の水を海に撒いたところ、話にたがわず鰊の大群が押し寄せ、村は豊漁に沸き立った。 ところが、村人が礼をしようと折居を訪ねたところ、彼女はいつのまにか姿を消していた。そこで、庵に残されていた神像を「姥神」として祀ったのが当社の始まりという。
瓶子岩。折居が神から授けられた瓶子が形を変えたものだという

姥神大神宮祭典

今から365年前の松前藩政期に「蝦夷地」の経済力を誇った江差が生んだ祭りがあります。蝦夷地最古の祭りと知られる姥神大神宮渡御祭です。
ニシン漁の恵みをおう歌し、大漁を神に報告し感謝したのがはじまりでした。京都祇園祭りの流れをくむ祭囃子の笛と太鼓の調べに乗って、宝暦年間(1751-1763)に作られた神功山をはじめとする、武者人形、能楽人形、文楽人形、歌舞伎人形などの豪華な13台のヤマが、吹き流しや錦の御旗をひるがえし、町内を練り歩きます。はるか遠い江差のニシン景気を現代に伝える夏の大祭です。

この祭りを地元の人と一緒に見学させてもらったことがあります。毎年8月9~11日の三日間は故郷に戻る人たちで江差の人口は膨れ上がります。祭りの間、各家庭では来客の接待をしてくれるのです。誰であろうがお構いなしで玄関は開けっ放し。飲み・食べ放題。江差の祭りは半端なものではありません。
祭り最大の見せ場は、練り歩いて山車の終点にあたる場所で、全体を上から眺めることができる旅館があります。地元の人でなければ知る由もありません。まさに絶景で感謝感動でした。

最近はどこの町でも祭りが盛り上がりません。北海道神宮祭でさえ、何時やっているのかのありさまです。近くの神社でも、祭りの笛や太鼓の音も聞こえてこなくなりました。なおさら江差には圧倒されます。

かもめ島まつり(7月第一土・日曜日)

江差町の3大祭りの一つで、夏の始まりを告げるお祭りです。姥神大神宮渡御祭と同じく、江差町における姥神大神宮の折居の伝説に行き着きます。

江差のシンボルである檜山道立自然公園かもめ島と青い海を海上にして、道内でも数少ない海の祭典が繰り広げられます。
しめ縄なえ飾りや全道北前船競漕大会など、町はどこに行っても人だらけの夏祭りです。

江差の街巡り

江差は文化遺産の多い町ですが、訪れた時に是非立ち寄っていただきたいのが「法華寺」です。
室町時代の建造物で「八方にらみの龍」は日本文人画の第一人者池大雅の作と伝えられています。
境内のケヤキは樹齢350年を超える北海道の名木。寒椿の大樹は260年こちらも忘れないように。

そうして江差追分を忘れてはなりません。こちらは改めて掲載します。