上紋峠越え(滝上町と士別市)

上紋峠(じょうもんとうげ)は、道道61号の士別~滝上線にある峠です。
標高は800m。峠の名称は士別市が属する上川郡から「上」、「紋」は滝上町の属する紋別郡からで、トンネルはなくシェルターが長く続くのが特徴です。

10年以上前になりますが、滝上(たきのうえ)町の芝さくらを見に行った帰りに峠を通りました。冬季間は峠を挟む約27kmが閉鎖されています。峠を挟んで、滝上町札久留(さくる)から岩尾内湖畔間には人家はありません。5月の下旬でしたが車に出会うことはありませんでした。
ところが峠近くに入ると景色が一変します。樹氷が一面に広がり、太陽の光でキラキラと輝いているのです。これにはびっくり。とうとう車を停めてしばしカメラに収めました。峠前後の景観は、白樺林と原生林、丸みを帯びた北方的な山岳風景で、峠の南方が大河天塩川の源水天塩岳です。峠を下ると岩尾内ダムを横目に見ながら朝日町に入り、私の故郷上士別町となります。

観光客が行かない滝上町の旅           

旭川からオホーツクに向けて2時間で人口2500人の滝上町に到着します。今は比布町から無料の高速道路が浮島ICまであるので便利になりました。

滝上町といえば「芝桜」で有名になりましたが、芝桜は他の町でも取り組んでおり観光競争が激しくなっています。

 

 


滝上芝桜の誕生

5月の下旬だというのに気温が上がらない寒い年でした。芝桜も半分程度で満開にはほど遠い状態。しかし、甲子園の7倍の広さがあるという、この山一面に広めた先人のことが気になりました。
地元の人たちが会場の設営をしていたので「滝上町に開拓で最初に入ったのはどこの県の人ですか」と訊ねると、「四国だよ」と教えてくれました。
やはり、田舎では自分の町のことを良く知っているのだと感心。

その後、気になったので滝上町についていろいろと調べてみました。
町名の由来は、ポンカムイコタン(渚滑川)の滝の上にあることで名付けられたといいます。

明治38年 高知県人西森亦吾が上渚滑原野52線に入地したのがはじまり。
明治40年初めて「滝上」の地名が北海道地図に現れます。
明治41年上渚滑原野40線に渚滑第二教育所(後の滝下小学校)開校され、明治42年愛知県人斉藤伊太郎が元町で日用雑貨商を営んだのが、本町商業者の元祖ということでした。

昭和29年、洞爺丸台風の被害により滝上公園の桜の木が壊滅状態になります。
当時、この公園を管理していた片岡さんという人が、昭和32年お寺の境内に咲いていた芝桜に心をひかれミカン箱一つを譲り受けて公園の片隅に植えたのが「滝上芝桜公園」のはじまりでした。
昭和34年、片岡さんの友人で朝倉さんが町長になったのを契機に、芝桜公園として本格的な造成がはじまります。行政ならびに住民のボランティアにより、根分け増殖され日本国内最大級の面積を誇る芝桜公園となったということです。
5月から6月に開かれる「芝ざくらまつり」では、花のじゅうたんを空から眺めるヘリコプターの遊覧飛行などもあります。
私が行っていたときに、芝桜公園の斜面で草取りをしているボランティアの人たちがたくさんおりました。私の庭にも一握りの芝桜を植えてみましたが、この草取りは中々面倒な作業です。

折角、滝上まで来たので、半分の芝桜だけを見て帰るわけにもいきません。
少し町を走ってみると素晴らしい渓谷があることを知りました。芝桜が町の観光名勝となりましたが、本来はこちらが本命ではないかと思ったくらいです。
市街地を流れる渚滑(しょこつ)川のことを、町の人たちは「錦仙峡」(きんせんきょう)と呼んでいます。
渚滑川は、市街地の中央付近で支流サクルー川と合流しており、川幅が狭く急流となるため大小幾多の滝を作っているのです。町名のとおり滝上にある町ですから山岳地帯です。

そのため市街地に大きな滝が3か所あり「洛陽の滝」「白亜の滝」「蚊竜の滝」と名付けられ、滝上渓谷「錦仙峡」は市街地の中を流れる珍しい渓谷となっているのです。その先に、西洋のお城のような建物が目に入ります。近寄ってみると、なんとホテルでした。
この渓谷の両岸に遊歩道があり、約5.4kmのウォーキングコースとなっています。春には清流に映える新緑、夏には木陰の涼、秋には紅葉、野鳥と出会えるバードウォッチングと四季を通じて楽しむことができるといいます。芝桜だけではなく、季節を選んで訪れると他にはない旅の時間となるでしょう。

また、下流部には4万平方メートルの広大な敷地に「香りの里ハーブガーデン」があります。
元々、滝上町はハッカの産地でもあります。現在はわずか10ヘクタールほどの畑でしか作られていませんが、ほかに栽培している地区がないため全国の95%のシェアを誇ります。
芝桜の次に着眼したのが香りの植物(ミント生産日本一)による観光開発でした。

平成2年、「童話村」のまちづくり

「芝ざくらの町」「花と渓谷の町」として取り組んできた滝上町ですが、次にまちづくりのテーマとして「童話村」を進められています。
滝や渓谷、森・川・畑などの豊かな自然や風景があり、そうして花と香り、小動物などを考えると童話の舞台になっているということです。
童話村のまちづくりのさまざまな舞台に登場してくるのが「ピコロ」です。
平成2年に全国に公募し選ばれたキャラクターです。

滝上町内には「おとぎの国を再現したような」テーマパークがあるわけではありません。 このテーマに沿って、住民の意識改革、発想の転換、自治体の企業戦略を進めていこうと「童話村」のまちづくりを進めていこうということです。

町では芝桜に続く観光として「ハーブと錦仙峡を訪ねるみち」が美しい日本の歩きたくなるみち500選の認定を受けています。